「建築知識ビルダーズ Summer 2016」に、3月23日に行われた『《そよ風》セミナー~堀部安嗣氏に学ぶパッシブソーラーハウス』の中での、堀部安嗣氏と伊礼智氏の対談の様子が掲載されていることをご報告しましたが、せっかくなので、堀部安嗣さんの「荻窪の家」の《そよ風》について、ブログで補足説明します。
「建築知識ビルダーズ Summer 2016」をご覧いただきながら、この記事を読んでいただきたいと思います。
(80~88頁)
平面図と、ソーラー集熱面積
「荻窪の家」は、延床面積143平方m。ですが、1階108平方m、2階35平方mなので、ほとんど平屋のようなプランです。
また、屋根の向きは60度西に傾いた3.5寸勾配。本来は、真南に向いた急勾配屋根が望ましいので、今回はソーラーの条件としては少し不利な状況でした。
集熱チャンバーの列数は、8列。なので、0.91×8=7.3m 。 屋根の流れ長さは、約3m程度であり、うち、2.1m。すなわち、集熱面積が21.8平方mであり、うち15.3平方mが、ガラスで覆われた集熱屋根ということになります。
これは、延べ床面積に比較して、少し面積が少ない状況でした。
ガラス+採熱板 ~ 最も効率の良い集熱方式
方位と面積の条件が、集熱には不利な中で、それを挽回のために、通常は、採熱板方式か、ガラス方式かのどちらかを選ぶ中、ガラス+採熱板という、効率の高い集熱方式を採用していただきました。
これは、鉄板屋根の上にガラス、下に採熱板という、そよルーフでも使われている方式です。
(写真はそよルーフなので、荻窪の家とは異なります。ガラス+採熱板のイメージだけつかんでください)
《そよ風2》本体ユニットは、一列型を選択
また、そよ風ユニットには、《そよ風2》一列型を採用していただきました。
《そよ風2》一列型というのは、屋根形状が、片流れだったり、南集熱チャンバーの場合、意匠上、北側に《そよ風》ユニットを設けたくない場合に使われる、最新型のユニットです。
《そよ風》は、棟を越えて北側に集熱チャンバーを並べることが多いのですが、今回、居室の上に機械スペースを設けるプランになっていたので、《そよ風2》一列型が最適の選択でした。
《そよ風2》一列型は、ユニット本体が、北側屋根面に出ない分、下に出る構造になっています。
87頁右下の図をご覧ください。野地板から320mm程度です。天井断熱材が80mmなので、部屋内に240mm程度出る程度です。小屋裏の天井高は最大でも1m程度と狭いスペースのようですが、余裕を持って設置することができました。
ソーラーの効果の検証
肝心のソーラーの効き具合ですが、84頁右下のグラフを見てみます。本だと小さいので、見やすいように拡大して掲載します。
本誌では全体のイメージをつかんでいただくため1週間分を掲載していただきましたが、《そよ風》の一日の動きとしては、少し見づらいので、1月1日分を拡大して見てみます。
《そよ風》は、本体ユニットの制御のために温度センサーが4つ接続されていますが、SDカードに温度の記録を取ることができるようになっています。
そのため、集熱の状況やソーラーの効果を細かく調べることができます。
1月1日の例で見ると、集熱開始は、10時40分頃です。通常は9時前後で始まることが多いので、少し遅いわけですが、理由としては、やはり屋根が真南から、西向きに60度傾いているため、屋根面の温まり方が遅くなっています。
その分、集熱が終わる時刻も通常よりも遅く、16時頃となっています。
そよ風が集熱運転を始めると、室温はぐっと上昇を始めます。室温は朝6時頃の18℃から、ぐんぐん上がってピークの16時20分になると最後は23℃程度まで上昇していきました。
この日だけでなく、冬の時期は毎日このような温度変化をしたまま過ごせていました。
棟温(集熱温度)がどのくらいの温度に達しているのかというのも気になりますが、最低室温が常時15~18℃以上をキープしているということを一つ目安にして、ソーラーハウスとしての良し悪しを判断しています。
他の日も確認しましたが、ほとんど16~18℃をキープしているので、ソーラーハウスとしては大成功です。住まい手の方からも、「暖かくて快適です」とのお言葉をいただきました。何よりもホッとする瞬間です。
これからは、夏に入ろうとしている時期なので、、機会を見て温度データを調べてみたいですね。お施主さんや堀部さんの了解が得られたら、ご報告したいと思います。