住まいとエネルギー消費
前章で「心地良い住まい」の条件として、「冬暖かく夏涼しい」「家中が均一な温度で保たれている」「吹き抜けなど開放的な空間構成」など、いくつか挙げさせていただきました。
次に、それらを実現するのに必要な住まいのエネルギーについて考えてみたいと思います。
1世帯当たりの住まいのエネルギーは、資源エネルギー庁の発行しているエネルギー白書などを見ると、おおよそのことがわかります。
統計を取り始めた1965年以降、消費量は増え続け、2010年度の世帯当たりの消費エネルギーは、40.2GJ(ギガジュール)となっています。
そのうち、暖房は26.8%(約10.8GJ)、給湯は27.7%(11.2GJ)を占めています。
この40.2GJは、その断熱性気密性からエネルギー消費が少なくて済むアパートやマンション、また単身世帯なども含めた日本の全世帯の平均を表したものであり、戸建住宅に限って言えばそれ以上に大きくなります。 例えば、資源エネルギー庁のWeb計算プログラムで計算すると、戸建て住宅の標準エネルギー消費量はⅣ-a地域、Q値2.0W/m2Kで計算して、57.5GJ(うち冷暖房は13.0GJ)と計算されます。しかしながら、これはいわゆるエアコンを使用した各居室間欠冷暖房を選択した場合であり、これを全館連続冷暖房を選択した場合には、85.7GJ(暖房部分は41.2GJ)にも達します。 |
「心地良い住まい」の条件である、「大きな吹き抜け」や「間仕切りの無い広い空間」で、「家の中が均一な温度に保つ」には、各部屋完結暖房ではなく、全館連続冷暖房の導入が必要です。
結果として、かなりのエネルギーの増大要因になることが見込まれてしまうのです。
「心地よい住まい」が「エネルギー多消費」の上で初めて成り立つということでは、あまり感心できません。
何か良い方法はないのでしょうか?
次の章では、2つの相反する問題の解決策としてのパッシブデザインについて学びます。
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