《そよ風》とパッシブデザイン

《そよ風》の特徴を、パッシブデザインの考え方にあてはめてみると下記のようになります。

集熱


《そよ風》は、屋根に集熱面を設けます。
壁面に太陽光を照射させて集熱するダイレクトゲインやトロンブウォールといった集熱方法は、日本の狭く密集した土地の形状では、集熱面に影がかかりやすく、一日を通じて安定した集熱を確保するのは困難です。
また、冬向きの仕組みであり、夏には日射遮蔽対策も講じなければなりません。
それに対して《そよ風》の屋根面で集熱する方法は、安定した日射を確保することが容易で合理的な方法です。

 

熱移動


パッシブデザインの問題点でも述べたとおり、輻射・対流・伝播というパッシブデザインで行われる熱移動は、本当に必要な場所に熱を移動するにはかなり難しいです。
《そよ風》では、屋根面で集熱した空気をファンの力を利用し、ダクトを通じて、強制的に床下に送ることで熱移動を行っています。
熱を運ぶ媒体として、空気を利用しているのも特徴です。空気は水などに比較して熱容量が少ないという欠点がありますが、漏れても家屋に損害を与える心配が無いため取り扱いが容易です。
また、外気を温め、室内に導入する経路をたどることで、室内の無負荷の換気を行うこともできます。

 

蓄熱


日本の家屋は木造が多く、蓄熱に適した熱容量の大きい部位があまり多くありませんが、床下の土間コンクリートは、大きい蓄熱容量を持ち、またその設置場所も、空間の最下層である床下にあるため、蓄熱・放熱の部位として適しています。

 

断熱気密


《そよ風》では、集熱空気の室内への取入流路を1箇所に集約し、温度センサーによって制御されたダンパーで開閉することで、昼間取得した熱を夜間に放出しない気密が保たれた仕組みになっています。 また、このダンパーの開閉のみで熱の経路を自由に選択できるため、夏と冬のモードの切り替えが容易に行うことができます。

 

採涼


夏の夜間、集熱屋根は放射冷却現象により冷やされます。
その冷えた屋根で外気より数度低い空気を作り、室内に取り入れ、床下の蓄熱コンクリートに蓄冷します。
蓄冷したコンクリートの冷気は、床下換気ファン「床やさん」を活用することで室内のクーリングに利用できます。

《そよ風》は、ファンやダンパーといった機械的なしくみがあることで、純粋なパッシブデザインの手法だけではなかなか解決できない、集熱、熱移動、蓄熱と、夏冬の効果的な切り替えといった問題をうまく解決して、効果的に自然エネルギーの利用を図ることができます。

次章では、《そよ風》のアクティブソーラーの仕組み「《そよ風》と太陽光発電・太陽熱給湯」について、説明します。
 

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